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ピクトグラムデザインの進化とその他のデザインへの影響

パリオリンピックも後半戦に入りました。スポーツデータを分析、提供する米国の専門会社「グレースノート」が2024年8月4日に更新した各国が獲得するメダル数の予想によれば、日本のメダル数は金メダル15個、銀メダル12個、銅メダル17個の計44個とされています。
さて、オリンピックと言えば、パリ大会でも様々な意味で話題となった開会式。ご覧になった方も多いのではないでしょうか。開会式で思い出されるのは東京大会のパントマイムアーティストたちによる“動くピクトグラム”のパフォーマンスが非常に印象的でした。このパフォーマンスは、ピクトグラムを動的に表現することで、視覚的なデザインに新たな命を吹き込み、多くの観客の心をつかみました。
パリ2024大会では、ピクトグラムを単なる視覚的なイメージから、スポーツファンにとって印象的な『紋章』として発展させるコンセプトが採用されています。
ピクトグラムは単なるアイコンから、スポーツの躍動感やエネルギーを表現する重要なデザイン要素へと進化しています。

Paris 2024 Olympics

近年、ピクトグラムは単なるオリンピックのシンボルを超え、日本のデザイン分野全般に多大な影響を与えています。その影響は観光業、インフォグラフィックス、ウェブ/UIデザイン、そしてマニュアル制作など、多岐にわたります。
今回のコラムでは、ピクトグラムのデザイン分野への影響について探っていきます。
特に、マニュアル制作における注意表示のマークとしてのピクトグラムの応用についても解説します。

オリンピックから見るピクトグラムの歴史と日本の貢献

ピクトグラムは、言語を超えたコミュニケーションツールとして、オリンピックの歴史の中で大きな役割を果たしてきました。
オリンピックに特化した一連のピクトグラムが初めて正式にデザインされ、採用されたのが1964年の東京オリンピックです。
この大会では、外国からの訪問者に対する案内標識として、言語の壁を超えて情報を伝えるためにピクトグラムが導入されました。このデザインは、日本のデザイン史においても重要な位置を占めています。

ピクトグラムのデザイン原則:シンプル化・明確化・直感的な理解

シンプルな形状と明確な表現

ピクトグラムデザインは、シンプルで明確な形状を持ち、視覚的な表現が特徴です。
不要なディテールを削減し、必要な情報を最小の要素で伝えるために簡略化されています。直線や基本的な幾何学形状を組み合わせることで、アイコンの認識性が高まります。

鮮やかな色使い

ピクトグラムでは、鮮やかな色彩が使用されます。
色はアイコンの識別性を高め、視覚的な引き立て役となります。一貫性を持たせるため、特定の色パレットが使用されることもあります。色の選択には、コントラストや目立ちやすさ、文化的な意味合いなども考慮されます。

モデルに基づく表現

ピクトグラムデザインは、モデルの動作やポーズに基づいて表現されます。
アスリートの動きやスポーツの特徴を捉えるために、モデルになったものの姿勢や動作がデザインに反映されます。このアプローチにより、ピクトグラムはよりリアルで生き生きとした印象を与えます。

直感的な理解を促す

ピクトグラムは、言語の壁を超えて直感的に理解されることを目的としています。
形状や色から情報を推測することができ、言葉に頼らずに意味を伝えることができます。これは、国際的なイベントであるオリンピックにおいて非常に重要な要素となります。

デザインの変化

オリンピックの歴史の中で、ピクトグラムデザインは進化してきました。初期のデザインは直線的な形状が中心でしたが、後に曲線や流れるようなデザインが導入され、より動きやエネルギーを感じさせるようになりました。
また、3Dデザインの登場により、立体的な表現が可能になり、リアリティが高まりました。さらに近年では、アニメーション化されたピクトグラムも登場しています。

ピクトグラムデザインの影響力:様々な分野における活用事例

ピクトグラムデザインは、単なるアイコンの集合体ではありません。それは視覚的コミュニケーションの革新的なアプローチであり、言語や文化を越えた情報伝達の可能性を示しました。このような特徴は、オリンピック以外の様々な分野にも大きな影響を与えてきました。

道路交通標識デザイン

道路交通標識では、ピクトグラムデザインの要素が頻繁に使用されています。
交通安全のために、アイコンの形状や色、モデルに基づいたデザインが採用され、視覚的に情報を伝えます。これにより、運転手は言語に関係なく、標識の意味を直感的に理解することができます。

観光案内や施設案内デザイン

観光業や施設案内では、ピクトグラムデザインが重要な役割を果たしています。
観光地や施設の案内やマップにおいて、アイコンが使用されることで、直感的に理解しやすい情報を提供します。外国人観光客にとっても、言葉の壁を越えて必要な情報を得ることができます。

インフォグラフィックスとデータ可視化

複雑なデータをわかりやすく伝えるために、カラフルなアイコンやシンプルな形状が組み合わせられます。
例えば、AppleのiPhoneでは、バッテリー残量や信号強度などの情報をインフォグラフィックで表示することで、ユーザーが直感的に状況を把握できるようにしています。

ウェブデザインとユーザーインターフェース(UI)デザイン

ユーザーが直感的に理解できるアイコンやボタンのデザインが採用され、使いやすいウェブ環境を提供します。特に、iPhoneのホーム画面に並ぶアプリのアイコンは、ピクトグラムを参考にデザインされた優れた例です。これにより、ユーザーは直感的にアプリの機能を理解し、使用することができます。

グラフィックデザインと広告デザイン

ピクトグラムデザインは、広告やグラフィックデザイン分野でもよく利用されます。
ロゴデザインやパッケージデザイン、広告の配信などにおいて、シンプルなアイコンが使用されることで、視覚的なインパクトを与えます。メッセージを簡潔に伝えるとともに、ブランドイメージの確立にも貢献します。

製品デザインと産業デザイン

製品デザインや産業デザインの分野においても、ピクトグラムの影響が見られます。
製品の操作方法や注意事項をアイコンで表すことで、言語に依存することなく情報を伝えることができます。ユーザーフレンドリーなデザインを実現する上で、ピクトグラムは欠かせない要素となっています。

注意表記マークへの応用:安全で効果的な情報伝達

安全と効果的なコミュニケーションのためのデザイン

マニュアルにおいて、注意表記のマークは極めて重要です。
注意、警告、禁止、指示などのマークは、ユーザーに対して重要な情報を迅速かつ明確に伝える役割を果たします。これらのマークは、事故や誤操作を防ぐためのものであり、視覚的な明瞭さが求められます。

ISO規格とピクトグラム

注意表記のマークは、国際標準化機構(ISO)によって定められた規格に従って設計されています。以下のISO規格が特に重要です。

ISO 3864「安全色及び安全標識」

安全標識に使用される色とデザインに関する国際規格です。この規格に基づき、注意表記のマークは以下のような原則に従っています


シンプルさ:情報を瞬時に伝えるため、デザインはシンプルでなければなりません。複雑なデザインは理解を妨げます。


一貫性:異なる注意表記マーク間で一貫したデザイン要素(形状、色、スタイル)を使用することで、ユーザーの認識を高めます。


色の使用:赤、黄色、青、緑などの色は、それぞれ異なる意味(危険、警告、指示、推奨)を持つため、効果的に使用することが重要です。


形状の意味合い:三角形は警告、円は指示、四角形は情報、禁止は斜線入りの円など、形状そのものが意味を持つことが多いです。


ISO 7001「公共情報標識」

公共の場で使用される情報標識のデザインに関する国際規格です。この規格は、公共の場で情報を直感的に伝えるためのガイドラインを提供します。

ISO 7010「安全標識」

安全標識の形状、色、デザインに関する国際規格です。この規格に従うことで、標識の統一性と理解しやすさが向上します。

注意表示マークのデザイン原則


視覚的な一貫性:マニュアル内のすべてのピクトグラムは一貫したスタイルでデザインされるべきです。これはユーザーが一目で理解しやすくするためです。


明瞭なアイコン:ピクトグラムはできるだけシンプルで明確であるべきです。複雑なデザインは理解を難しくします。


国際規格の遵守:ISO 7001(公共情報標識)やISO 7010(安全標識)など、国際的に認知された規格に従うことが重要です。


マニュアルにおける具体的な例


警告マーク:    危険な操作や作業を警告するために使用。例:高電圧、火傷注意など。


禁止マーク: 行ってはいけない操作や行動を示すために使用。例:水濡れ禁止、分解禁止など。


指示マーク:   必ず行うべき操作や手順を示すために使用。例:手袋着用、保護メガネ着用など。


情報提供マーク:追加情報や補足説明を提供するために使用。例:動作確認、使用前に読むなど。


 

ピクトグラムの未来:進化し続ける視覚コミュニケーション

近年、観光業界においても、ピクトグラムが視覚的情報伝達の重要な手段として広く活用されるようになりました。言語の壁を越えて直感的にメッセージを伝えられるピクトグラムは、外国人観光客に対する情報提供に最適です。全国の観光地や施設では、わかりやすいピクトサインが設置され、スムーズな観光を後押ししています。
一方、インフォグラフィックスの分野でも、ピクトグラムは情報のビジュアル化に大きく貢献しています。文字や数字だけでは伝わりにくい複雑なデータを、ピクトグラムを使ってわかりやすく視覚化することができます。企業が発信する報告書やウェブサイトなどでも、ピクトグラムを活用したデータ可視化が普及しつつあります。
さらに、ウェブデザインやUIデザインの領域においても、ピクトグラムの活用が不可欠となっています。アプリやウェブサイトでは、ピクトグラムによるシンプルかつ直感的なUIが求められており、ユーザーエクスペリエンスの向上に一役買っています。特にモバイル端末の小さな画面では、ピクトグラムは重要な役割を果たしています。

まとめ:グローバル社会におけるピクトグラムの重要性

マニュアル業界も近年グローバル市場が当たり前となり多言語化が進み、製品やマニュアルを幅広い地域の人々へ効果的に伝えることが重要視されています。単に言語を翻訳するだけでなく、デザインを活用して情報を視覚的に伝える手法が注目されています。
ここ最近、マニュアルの多言語化の需要が高まっており、より多くの人々が理解できるよう、ピクトグラムを活用したデザインの工夫も求められています。
弊社のデザイン部門では、グローバル市場に向けたマニュアル制作に柔軟に対応することが可能です。
グローバル展開をお考えの企業様がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。
言語と視覚的なデザインを組み合わせた、分かりやすいマニュアル制作をご提案させていただきます。

 

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