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北海道大学との共同研究 論文報告会及び講演会レポート
近年、ますます高度化・複雑化するテクノロジーへの対応や、顧客ニーズの多様化が進む中、YAMAGATAでは、お客様にとって本当に分かりやすく、役に立つマニュアル作成の重要性を再認識し、より高品質なマニュアル作成を目指した取り組みを進めています。この課題を解決するために、自然言語処理やAI技術において豊富な知見を持つ北海道大学大学院情報科学研究院 情報理工学部門 複合情報工学分野 調和系工学研究室と、2023年より「次世代マニュアル」プロジェクトに関する共同研究を開始いたしました。
2024年8月1日にYAMAGATA本社にて、北海道大学との共同研究プロジェクトに関する「論文報告会及び講演会」を開催いたしました。この講演会は、昨年から続く北海道大学大学院情報科学研究院 情報理工学部門 複合情報工学分野 調和系工学研究室との「次世代マニュアル」共同研究の成果報告と、AI技術に関する知見を深めることを目的として、社員向けに開催されたものです。当日は北海道大学の山下倫央准教授、横山想一郎助教、そして本共同研究に参加している大学院生の上前氏を講師にお迎えしました。
講師
北海道大学大学院情報科学研究院 情報理工学部門 複合情報工学分野 調和系工学研究室
調和系工学研究室公式サイト
山下倫央准教授
横山想一郎助教
上前諒輔氏
昨年度の研究活動報告
まず昨年度の共同研究活動内容について、弊社プロジェクトメンバーより説明がありました。
昨年度は社内のライターにも協力いただき、悪文と修正文を収集しました。その収集されたデータに対して、プロジェクトメンバーのライターとAIによって、どのライティングルールを適用して悪文を修正文に書き換えたかを分類し、タグ付けを実施しました。
その情報を基に、北海道大学調和系工学研究室の上前氏が中心となりシステム設計、AIによるテクニカルライティングを行うモジュールを作成、実験を実施しました。AIによる生成文章の品質については、YAMAGATAの社員120名弱を対象にアンケートという形で評価を実施。
論文報告:大規模言語モデルを用いた文章生成
まずは山下准教授より、マニュアル作成を自動化するための計画について説明、そして本共同研究の二年目の計画について概略が説明されました。
マニュアル作成全体を「目的設定」や「文章執筆」など7つの作業に分解し、それぞれの作業をAIで処理する方法を検討しました。
現在は「情報整理」から「文章構成」までの作業はAI化の道筋が見えてきたものの、「目的設定」や「素材収集」はまだ難しいとのことでした。今後は実現可能な部分からAI化を進め、最終的にはマニュアル作成全体をAIで完結させることを目指します。
研究の二年目にあたる本年度は、特に「文章生成機能のシステム化」を目標とし、マニュアル作成の自動化を念頭に置きながら、システムの課題や取り組み方を検討していく予定です。
そして、上前氏より、上記の内容を踏まえた上で執筆された卒業論文に関する発表が行われました。
論文では、「大規模言語モデルを用いた文章生成」をテーマに、以下の3点について詳細に説明されました。
- 研究の目的:
AIを活用することで、誰でも利用しやすいマニュアル作成の実現を目指し、特に人が書いた文章を可読性の高い文章に修正する手法の研究に取り組んだこと。 - 提案手法:
大規模言語モデルを用いた判定モジュールと修正モジュールから成るライティングルール適用手法について、図を用いながら分かりやすく解説。 - 実験内容と結果:
実際にチャットGPTを用いて文章修正を行った実験の内容と結果について報告。
調和系工学研究室の研究紹介
論文の報告会に続き、山下准教授、横山助教より、調和系工学研究室で行われているAI関連の研究内容について、以下の2つのテーマで紹介がありました。
- 災害検証報告書からの文書抽出:(山下准教授)
災害後の地方自治体が作成する災害検証報告書から、必要な情報を効率的に抽出するAI技術の開発について。 - 帝国議会議事速記録からの情報抽出:(横山助教)
明治・大正時代の帝国議会議事速記録から、AIを用いて必要な情報を抽出し分析するツールの開発について。
まとめ
今回の講演会は、参加した社員にとって、北海道大学との共同研究の進捗状況や、AI技術の可能性について改めて認識を深める貴重な機会となりました。特に、今回の講演会では、マニュアル作成支援という、社員の多くが実務で関わる可能性のある分野へのAI技術の応用が紹介され、より身近な問題としてAI技術をとらえることができたという意見が多く聞かれました。
またYAMAGATAでは、既に全社員が複数の生成AIを使える環境が整っており、プロンプトエンジニアリングの講習会なども実施しています。今回の北海道大学との共同研究では、実証実験を通して得られたノウハウを活かし、AIを用いたテクニカルツールの運用を開始しています。テクニカルライティング業務におけるライティングの効率化を実現するだけでなく、機械翻訳のプリエディット工程など、幅広い業務においても活用されています。
研究成果をスピーディーに実務レベルのツールへと昇華させ、全社展開を実現した今回の取り組みは、産学連携によるオープンイノベーションの成功事例として、YAMAGATAにとって大きな自信となりました。
今回の講演会で報告された2023年度の研究成果は、2024年10月9日(水)~11日(金)に京都リサーチパークで開催されるTCシンポジウム2024でも発表される予定です。
https://jtca.org/symposium/sympo-information/
今後もYAMAGATAでは、社員のAI技術に関する知見向上を図るとともに、「次世代マニュアル」プロジェクトの進捗状況を随時発信してまいります。
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