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ベトナム:2023ー2024年のベトナム経済の動向(前編)

YAMAGATAグループは世界各国の拠点から最新の市場動向を迅速にキャッチし、ビジネスに活かしています。今回はベトナムから届いた2023年/2024年のベトナム経済のレポートを2回にわたり紹介します。
今回はその1回目として、2023年を振り返り、経済成長の政策、公共投資の動向、グリーン&デジタル化のトレンドなど、8つの視点からベトナム経済の展望を深く掘り下げます。

2023年のベトナム経済概況:明るい兆しと抱える課題

2023年、ベトナム経済はインフレ、世界の公的債務増加、地政学的紛争という困難な環境にもかかわらず、顕著な成長を遂げました。この成長は、国際社会から高い評価を受け、ベトナムの地域および世界における地位と評判の向上に貢献しています。
産業貿易省の「2023年のベトナム経済に関する研究」、Lucと「BIDV Training and Research Institute Author Team」の分析、そしてベトナム統計局のデータに基づくと、2023年のベトナム経済には8つの明るい兆しが見られます。

① 多くの経済成長促進政策
② 経済の段階的回復
③ インフレのコントロール
④ FDI(外国直接投資)の増加
⑤ 公共投資の増加
⑥ 金融市場の安定
⑦ グリーン化とデジタル化の推進
⑧ 外交と国際統合の成功

① 多くの経済成長促進政策

2023年のベトナム経済概況において、国は多くの経済成長促進策を講じました。
主に、財政政策の一環として、国会と政府は納税の猶予や地代、税金、手数料の一部減額などを実施し、その総額は約198兆4000億ドン(VND)にのぼりました。
これに加えて、2024年6月末までの付加価値税2%の減税や、同年のガソリン・石油製品に対する環境保護税の50%減税などが決定されました。
金融政策の面では、ベトナム国家銀行が資本調達と貸し出し金利の削減を行い、4回にわたって営業金利を0.5~1.5%引き下げました。これは、顧客への資本アクセスと供給を増やすための措置です。
また、国家銀行は債務の再編成やリスケジュール、信用機関による融資や社債投資の一部条件の緩和を行い、市場の厳しい状況に対処するための対策を講じています。

② 経済の段階的回復

2023年のベトナム経済は、段階的に回復しています。第1四半期から第4四半期までの成長率はそれぞれ前四半期を上回り、年間を通じて世界平均の2.9%やASEAN地域の平均成長率4.3%に比べても良好な水準でした。
具体的には、第1四半期は3.28%、第2四半期は5.6%、第3四半期は5.92%、第4四半期は6.72%の成長率を記録し、2023年全体で5.05%の成長を達成しました。
これは国会と政府が目指した6〜6.5%には及ばないものの、他の多くの国々と比較しても良い伸び率です。
また、経済の各セクターも徐々に回復の兆しを見せています。
鉱工業生産は年初のマイナス8%から年末にはプラス3%へと好転しました。輸出も年初のマイナス26%から年末にはマイナス4.4%へと改善。公共投資は21.2%増と過去最高を更新し、新たな外国直接投資(FDI)の誘致は32%増加しました。観光業も順調に回復し、農業部門も3.83%の成長を遂げ、2011年以来の最高水準を記録しました。
特筆すべきはビジネス部門の回復で、困難を抱えながらも市場に参入する企業の数が市場から撤退する企業の数を上回り、年末にはその数が1.3倍に増加しました。

③ インフレのコントロール

2023年、ベトナムではインフレがかなり低いレベルで抑えられました。
平均消費者物価指数(CPI)の上昇率は2022年比で3.25%となり、政府が設定した4〜4.5%の目標を下回りました。また、コアインフレ率は前年比で4.16%上昇し、2022年の4.99%よりも低下しました。これは、2023年初めに5%を超えていたインフレ率が、年を通して持続的な下降傾向にあることを示しています。
このデータから、ベトナム経済におけるインフレが効果的に管理されている様子がうかがえます。

④ FDI(外国直接投資)の増加

2023年には、ベトナムへの外国直接投資(FDI)の誘致が活発に行われ、投資額が記録的な水準に達しました。
アメリカ、シンガポール、中国、韓国などからの大規模プロジェクトが多数進行した結果、2023年の登録されたFDI総額は366億ドルに達すると推定されており、これは2022年と比較して32.1%の増加を意味します。また、2023年のFDI支出は232億ドルに達し、これは2022年比で3.5%の増加であり、過去7年間での最高記録です。
このような動きは、政治的な安定とベトナムの成長見通しに対する投資家の自信を示しており、今後のベトナム経済の成長への期待が高まっています。

⑤ 公共投資の増加

ベトナムにおける公共投資支出の伸びは非常に順調でした。
国家予算からの投資資金支出は、前年比21.2%増の625兆3000億ドンに達すると推定されており、これは2022年の18.8%増を上回るものの、2020年の33%増に比べれば低い水準です。しかし、この伸びは年間計画の85.3%に達しており、2024年1月末までに首相が指定した95%の水準に達する可能性が高いと見られています。
これは、国のインフラや社会サービスの向上に向けた積極的な投資が行われていることを示しています。

⑥ 金融市場の安定

2023年において、ベトナムの主要な財務残高は基本的に保証され、金利は約2%低下しました。また、基本為替レートも安定しており、不安定な国際外国為替市場の状況の中で約2.6%上昇しました。さらに、社債市場や不動産市場も徐々に安定を取り戻し、回復の兆しを見せています。
このような動きは、社会保障、食糧安全保障、エネルギー保障など、国の重要な分野において安定的な状態が保たれていることを示しています。

⑦ グリーン化とデジタル化の推進

2023年のベトナムでは、グリーン化、デジタル化、エネルギー転換という重要な傾向が積極的に推進されています。
これは、2021年から2030年にかけてのグリーン成長戦略と、ビジョン2050を実施する2年目にあたり、初期の成果が既に見られています。特に、国内外の資源からのグリーン財源の活用が優先されています。
また、ベトナムのデジタルトランスフォーメーションは、2023年は年間約20%の成長を見せ、ASEAN地域で最高の成長率を記録しました(Google、Temasek、Bain & Co.、2023年の報告による)。
キャッシュレス決済の利用も急速に増加し、2023年には約110億件の取引が行われ(前年比約50%増)、総取引額は2億ドンを超える(前年比約20%増)という記録を達成しています。
これらの動きは、ベトナムが経済的に持続可能な成長を目指し、革新的な技術と環境に優しい施策を取り入れていることを示しています。

⑧ 外交と国際統合の成功

2023年、ベトナムは外交と国際統合の分野で多くの重要な成果を達成しました。
特に米国および日本との包括的戦略的パートナーシップへの格上げや、中国との協力関係の強化・深化により、ベトナムの国際的な地位と威信は一層強化されました。また、国連やASEANにおける重要な役割を成功裡に遂行しています。
これらのベトナムの取り組みは国際機関からも認められ、高い評価を受けています。
国際機関はベトナムの成長率が2023年に約5%、2024年には5.5〜6%に達すると予測しています。また、信用格付け機関フィッチ・レーティングスは、2023年12月にベトナムの長期国家信用格付けを引き上げ、BB+の格付けと「安定的」な見通しを付与しました。これは、ベトナムの財政の安定性と中期的な良好な成長見通しが高く評価された結果です。
このような国際的な評価は、ベトナムが今後も安定した成長を続けることに対する信頼を示しています。
2023年のベトナム経済には、多くの有利な要因がある一方で、成長を妨げる多くの困難や課題も存在しています。
具体的には、以下のような点が挙げられます。
まず、地政学的な不安定さや世界経済の困難、総需要の弱い回復、多くの国における高インフレ、そして不安定なサプライチェーンが国内経済に影響を与えています。これらは、ベトナム経済の全体的な環境を厳しいものにしています。
次に、鉱工業生産はプラスの変化を見せてはいますが、受注の減少、投入コストの上昇、輸出市場の不足などにより、依然として成長は鈍く、2022年と比較しても大きな加速には至っていません。特に製造業と加工業においてはその傾向が顕著です。
さらに、世界需要の減少、金融政策の引き締め、インフレ率の高止まりにより、輸出入活動の回復はゆっくりとしています。これにより、国際貿易におけるベトナムのポジションは挑戦的な状況に置かれています。
不動産市場に関しても、2023年に社債の満期と返済に対する高いプレッシャーが背景にあり、キャッシュフローの制約により市場は依然として困難な状況が続いています。

最後に、世界経済全体の不透明さとベトナムのビジネス環境の困難により、投資家の積極的なプロジェクトへの投資が見られず、2023年の外国投資誘致は期待された効果を発揮していません。これらの点が、ベトナム経済成長の一時的な足かせとなっていますが、政府や関係者の様々な取り組みにより、将来の発展には期待が寄せられています。


参考文献:
「2023年のベトナム経済と2024年の見通し」
「2023年の成長見通しと2024年の経済発展見通し」 – ベトナム統計局 
「2023年の世界とベトナムの経済ハイライト – 2024年の見通し」
「専門家から見たベトナム経済2024年」

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