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ベトナム:2023ー2024年のベトナム経済の動向(後編)

前回のコラムでは2023年を8つの視点から振り返りました。今回は2023-2024年のベトナム経済の動向(後編)として、ベトナムのマクロ経済指標や経済政策を中心にお届けします。

世界経済の課題

2024年の世界経済は、インフレと金利の高水準、金融政策の引き締め、金融リスクの増加、そして消費のゆっくりとした回復により、横ばいか若干の減少に留まると予想されています。
しかし、国際的な評判の高い機関は、2024年の見通しに前向きな評価を与えており、その中でも特に注目されているのは、ベトナムの経済です。
国際通貨基金(IMF)は2023年10月に、2024年の世界経済成長率が約2.9%になると予測していますが、ベトナムの成長率は約5.8%と予想されており、これは世界平均の約2倍です。これにより、ベトナムは2024年に世界で最も高い成長率を誇る経済圏の一つになると見られています。
フィッチ・レーティングスは、ベトナム国内の金融政策が経済を支えていると考え、2024年の経済成長率を6.3%、2025年には7.0%に達すると楽観的に見ています(Monetary and Finance Magazineによる)。
アジア開発銀行(ADB)によれば、ベトナム経済は国内消費の好調、インフレの緩和、公共投資資金の支出加速、貿易活動の改善により、引き続き安定し、急速に回復することが期待されています。
特にサービス分野では、観光業や関連サービスの復活が期待されています。また、農業セクターも成長が見込まれ、食料価格の上昇から恩恵を受けるでしょう。加えて製造業も依然として経済活動の主な原動力であり、米国とEUの経済が回復するにつれ、輸出への障害は減少すると予想されています。

ベトナム経済のリスク要因

2023年11月9日、ベトナム国会は2024年の社会経済発展計画の目標として、GDP成長率を約6.0~6.5%とすることを承認しました。
一人当たりのGDPは約4,700~4,730米ドルに達し、加工製造業の割合はGDPの約24.1~24.2%になると見込まれています。消費者物価指数 (CPI) の平均成長率は約4.0〜4.5%、社会労働生産性の平均成長率は4.8〜5.3%と予想されています。
しかし、マイナスのシナリオも存在します。2024年には、世界経済における重要な成長国であるベトナムの主要貿易相手国が弱まる可能性があります。これにより、ベトナムの経済成長率は約5.0~5.5%にとどまる可能性があります。
外部からの影響、経済回復の遅さ、地政学的紛争の激化などがベトナムの輸出、投資、消費、国際観光にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。特に地政学的紛争が激化すると、ベトナムの重要な貿易路線や市場へのアクセスに影響を与え、輸出主導の経済成長に障害を生じさせる恐れがあります。

ベトナムの2024年経済とインフレの展望

2024年のインフレ予測について、多くの経済専門家は平均CPIが3.5~4%になると予測していますが、これは2023年よりも高い水準です。この予測は、地域最低賃金の引き上げ、電気料金の値上げ、授業料、病院代など多くの管理項目に対する地方行政の調整に大きく影響されると考えられています。
インフレ圧力を増大させる主な要因としては、原材料価格の高騰、電気料金の上昇、食料生産の減少、国家管理下のサービス価格の上昇、賃金と消費財価格の季節的増加、政府支援プログラムによる総需要の増加などが挙げられます。
特に、地政学的不安定による中東での紛争激化は、石油供給の混乱を引き起こし、OPEC+の日量約220万バレルの追加自主減産が原油価格上昇の一因となり、2024年のインフレ圧力を高める可能性があります。
一方で、インフレを抑制する要因も存在します。食料の積極的で豊富な供給、マクロ経済の安定、政府による価格管理、米国経済の軟着陸予測や、連邦準備制度理事会(FRB)の利下げなどが、インフレ圧力を緩和する可能性があります。これにより、ベトナムドンと米ドルの為替レートが低下し、インフレ率を抑制することが期待されます。
さらに、政府が年末に信用拡大を指示し、商業銀行の金利やベトナム国立銀行の基本金利が引き下げられることが予想されます。これにより、インフレ圧力が生じる可能性がありますが、政府は商品やサービスの戦略的価格を管理する経験を積んでおり、2024年のインフレ抑制目標4%を達成することは十分に可能と見られています。
前述の通りADBによれば、ベトナム経済は回復力を維持し、緩やかなインフレと共に堅調な国内消費、投資資本の支出加速、産業や商業活動の改善などにより、近い将来に急速な回復が見込まれます。
サービス部門、特に観光産業は、今後も拡大が予想されます。農業セクターは、食料価格の上昇の恩恵を受け、3.2%の成長が見込まれています。製造業も経済活動の主要な牽引役として位置づけられ、輸出への制約は緩和される見込みです。

ベトナムのマクロ経済指標と経済政策

ベトナム国会は、2024年のGDP成長率を約6~6.5%とする目標を承認しました。
一人当たりのGDPは約4,700~4,730米ドルに達し、GDPに占める加工製造業の割合は約24.1~24.2%となる見込みです。
消費者物価指数 (CPI) の平均成長率は約4~4.5%、社会労働生産性の平均成長率は4.8~5.3%と予想されています。国家予算歳入は約5%増加し、国家財政赤字はGDPの4%未満となる見込みです。
これらの目標を達成するため、政府はマクロ経済の安定強化、インフレの制御、経済の主要なバランスの確保に焦点を当てています。
また、戦略的ブレークスルーの実施、成長モデルの革新、デジタルトランスフォーメーションの推進、公共投資の再構築、交通インフラプロジェクトの進捗加速など、経済運営において重要な課題に取り組んでいます。
さらに、不良債権の処理や信用機関の再編、国有企業および企業の再構築と業務効率の改善にも力を入れています。
これらの取り組みにより、ベトナム経済は持続的な成長を遂げ、国際的な競争力を高めていくと予想されます。政府の戦略的な方針と経済活動の活性化が、ベトナムの将来の発展にとって重要な鍵となるでしょう。

ベトナムの金融政策と経済成長戦略

ベトナム経済の発展に向けた政策として、金融政策の積極的かつ柔軟な運用が重要視されています。これには、貸出金利の引き下げや、成長の主要な原動力である投資、消費、輸出に焦点を当てた信用の集中化が含まれます。
また、2024年には15%以上の信用成長を目指す計画も進行中です。

公共投資と国家目標プログラム

公共投資資本、社会経済回復・開発プログラム、国家目標プログラムの実施は、年初から加速される予定です。公共投資資金の実行率は計画の95%以上を目指します。
地方レベルでの国家目標プログラムの効果的な実施や、歳入の増加と地方行政予算の節約にも注力されます。公的債務や政府債務、国の対外債務の管理も厳格に行われ、2024年の地方行政予算の歳入見積もりは2023年の実施と比較して約5%増加する予定です。

国際市場と貿易戦略

国際市場の拡大と多様化を目指し、製品品質の向上や自由貿易協定(FTA)の効果的な活用が求められます。新たなFTAの交渉と締結の促進、企業のグローバルサプライチェーンへの参加支援、密輸と貿易詐欺の防止と撲滅も重要な施策です。

経済管理の改革とインフラ開発

政府は、多くの政策に対する修正や補足を継続的に検討し、提案しており、社債市場、土地使用権、不動産、労働、科学技術などの分野の回復と発展にも注力しています。
また、行政手続きやビジネス規制の削減と簡素化により、2024年までに関連コストを少なくとも10%削減することを目指します。
インフラシステムの同期的で現代的な構築と開発も重要な要素です。
特に高速道路システムの構築と開発、空港や港湾、都市および地域間のインフラのアップグレードが進行中です。2025年までに3,000km以上の高速道路事業を推進する計画もあります。

経済の持続可能な成長と再構築

経済の再構築においては、成長モデルの革新、競争力の向上、迅速な発展に重点を置きつつ、持続可能性も重視されます。
デジタル経済、グリーン経済、循環経済、電子商取引、新興産業および分野の発展に注力し、特に加工、製造、半導体チップ製造産業の回復と強力な発展が目指されています。

中央と地方の予算管理強化

ベトナム経済の再構築と発展において、中央予算の中心性を強化し、国家予算の管理、配分、使用の効率を改善する政策の策定が重要な方針です。地方予算においても、積極性と柔軟性を高めることが求められています。

公共投資と海外融資の再構築

公共投資、特に海外融資の再構築には、オープンな手続きと効果的な活用が必要とされています。
このプロセスは、蔓延する断片化や無駄、非効率化の状況を改善するための重要なプロジェクトに焦点を当てて進められます。

信用機関システムの再構築

信用機関システムの抜本的な再構築、特に不良債権処理に関する法的規制の完成と相互所有の終了が重要な課題です。脆弱な銀行への対処と不良債権処理の計画の実施に焦点を当てることが求められています。

国有企業システムの再編

国有企業システムにおいては、再編と業務効率の改善、設備投資の促進、特に大規模プロジェクトを通じて主要な経済部門や新産業、分野への影響を主導することが目標です。
また、企業における国家資本の管理と使用に関する法律の改正も進められます。

集団経済と民間企業の発展

集団経済の発展に重点を置き、2023年に協同組合法がより効果的に改正され、2024年7月1日から施行が予定されています。
民間企業、特に中小企業の強力な発展は、経済の原動力と見なされています。
外国投資プロジェクトを選択的に誘致し、国内企業との緊密な連携を図ることで、地域および世界のバリューチェーンへのさらなる深い参加を目指します。
これらの方針は、ベトナム経済の持続可能な発展と国際競争力の強化に向けた重要なステップとなるでしょう。国家予算の効率的な管理、信用機関の安定、国有企業の再編、集団経済と民間企業の促進など、多角的なアプローチが経済発展の鍵となります。

経済再構築計画の進捗と課題

グエン・チ・ズン計画投資大臣によると、2021年から2025年までの経済再構築計画における23の目標のうち、10の目標は達成可能であり、残りの13の目標は大きな努力を必要としています。
社会投資総資本、全要素生産性(TFP)、不良債権処理、企業の資本安全性、信用機関などのいくつかの指標には肯定的な結果が見られますが、労働生産性の向上や事業発展を示す指標の中には困難を伴うものもあります。
ズン大臣は、社会経済発展計画と経済再構築計画の目標を達成するために、経済の安定化を堅固かつ一貫して達成し、主要なバランスを確保することが必要であると述べています。
これには、内部能力と自律性の強化、グローバルバリューチェーンでの地位の強化が含まれます。また、マクロ政策を同期的かつ柔軟に管理し、経済の管理と行政において機関間で緊密に調整することが求められます。

経済の革新とデジタル化

経済の再構築には、投資、消費、輸出など成長の原動力を強化するため、柔軟でタイムリーかつ効果的な政策対応が重要です。
成長モデルの革新により大きな変化を生み出し、デジタル経済の推進を目指しています。同時に新たな産業、ハイテク、ソース技術、新素材の研究開発にも力を注ぎ、経済の生産性、品質、効率性、競争力の向上を追求します。

公共投資と環境保護の推進

公共投資資本の進捗をさらに加速させ、特に主要な交通プロジェクトの実施と支出に注力しています。
3つの国家目標プログラムの実施方法と実践方法をより効果的なものに更新し、グリーントランスフォーメーションの推進、気候変動への積極的な対応、自然災害の予防と対策、資源管理と環境保護の強化にも力を入れています。

これらの取り組みは、ベトナムの経済発展と再構築に向けた重要なステップであり、国内の成長と国際競争力の強化に大きく貢献するでしょう。


 

参考文献:
フィッチ・レーティングス:ベトナムの財政・金融政策が経済に大きく貢献
2023年の世界及びベトナム経済の主要ハイライトと2024年の見通し
国会、2024年の経済・社会開発計画に関する決議を通過
2023年のベトナム経済と2024年の見通し

 

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