
欧州市場で医療機器を展開する上で不可欠な「MDR(欧州医療機器規則)対応」。厳密な要件を満たすためには各国の言語で正確なドキュメントを提供する必要がありますが、専門性の高い内容を多言語で整えつつ、発売前の機密情報を保護し続けることは容易ではありません。 本コラムでは、MDR対応に関連する翻訳業務と情報管理のリスク、および国際規格(ISO)を背景にしたプロセス・体制整備のポイントを解説します。
以下の図解で、本コラムでお伝えしたい「MDR対応における課題と、ISO規格を活用した解決策」の全体像をまとめました。




各項目の詳しい解説や背景については、以下のコラム本文をご覧ください。
医療機器のドキュメント制作は、単なる「文章の置き換え」ではありません。対象国の規制要件、医療現場での使用環境、専門用語の特性などを踏まえ、使用者が誤解なく情報を受け取れるように構成することが求められます。

翻訳過程での確認不足や表現の統制不良は、次のようなビジネスリスクにつながる可能性があります。
使用者の誤解や誤操作による医療事故の誘発
規制当局(ノーティファイドボディなど)からの指摘による審査の長期化
承認および市場投入プロセスの遅延、または販売停止命令
文書の再修正による想定外のコスト増加
企業ブランドおよび製品に対する信頼性の著しい低下
医療機器関連文書では、「意味が通じればよい」というレベルではなく、誤解を招きにくい形で情報を提供することが、コンプライアンス上重要な条件となります。
品質に関する配慮と同様に重要なのが「情報管理」です。MDR対応に向けて準備される技術文書や設計資料、臨床データなどは、企業の根幹に関わる機密情報の塊です。
これらの文書を多言語展開するために外部の翻訳ベンダーへ委託する際、情報漏洩のリスクが伴います。機密情報の取り扱いルール、アクセス権限の厳格な管理、ファイルの安全な送受信経路など、セキュアな体制が構築されていない場合、情報流出による計り知れない損害を被る可能性があります。したがって、翻訳パートナーの選定においては、単なる翻訳スキルだけでなく、企業としての情報管理体制の成熟度が問われます。
翻訳に関わる運用と情報セキュリティを社内の属人的な基準で管理するのには限界があります。そこで有効な解決策となるのが、国際規格(ISO)に基づいたプロセスの導入です。第三者機関に認証された体系的なルールを活用することで、品質のばらつきを抑え、リスクを最小化することが可能になります。

翻訳サービスにかかわる組織的なプロセスや体制を整えるうえで代表的な規格が「ISO 17100」です。この規格は、翻訳者や校正者の力量(専門知識や経験年数)、翻訳からレビューに至るまでの作業プロセス、そしてプロジェクト管理の要件を厳密に定めています。この規格に則ったプロセスを経ることで、属人的なミスを防ぎ、安定した翻訳成果物を得ることができます。
また、近年活用が進む機械翻訳を利用する場合には、「ISO 18587」が重要な指標となります。これは機械翻訳後のポストエディット(人間による確認・修正)に関する要求事項を定めたものであり、翻訳プロジェクト全体の進め方や管理方法を体系立てて運用するための指針として機能します。
ISO基準のプロセスでは、プロジェクトごとの記録保持や用語集の厳密な運用も求められます。これにより、取扱説明書やソフトウェアUI、ラベル間で医療用語の不統一が生じるのを防ぎ、改訂時にも一貫性を確認できるトレーサビリティを確保しやすくなります。
機密情報の保護に関しては、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格である「ISO 27001」が有効な基準となります。
情報の機密性(アクセス制限)、完全性(改ざん防止)、可用性(必要な時に利用できる状態)をバランスよく管理する仕組みを持つ組織であれば、MDR対応に必要な発売前のデリケートな技術情報も安心して委託することができます。プロジェクトに関わるすべての関係者に対するセキュリティ教育や、物理的・技術的な情報漏洩対策がシステムとして機能しているかが重要です。
医療機器のドキュメント制作において、品質とセキュリティの両立にお悩みの場合は、専門的な知見と認証体制を持つパートナーへの委託が確実なアプローチです。

YAMAGATA株式会社は、医療機器を含む専門性の高い分野において、アジア・欧州を中心に100言語以上に対応する翻訳・ローカライズサービスを提供しています。
当社は、翻訳品質を担保する「ISO 17100」をローカリゼーション部やベルギーの翻訳部門(YAMAGATA EUROPE)で取得しているほか、機械翻訳のポストエディット品質に関する「ISO 18587」も取得し、厳格なプロセス管理を実践しています。
また、情報セキュリティマネジメントシステムである「ISO 27001」をコンテンツクリエーション統括部やローカリゼーション部などで取得しており、お客様の重要な機密情報を堅牢な体制のもとで保護しています。
翻訳者・校正者の要件定義から、用語の一貫性管理、記録保持まで、品質と機密性を徹底的に重視した体制により、MDR対応に必要な技術文書、取扱説明書、製品ラベルなどの多言語展開を総合的にサポートいたします。
MDR対応においては、医療機器そのものの性能だけでなく、付随するドキュメントの「適切な翻訳運用」と「厳格な情報管理」が、コンプライアンスの遵守と市場での信頼獲得に直結します。
誤解を招きやすい表現や情報漏洩を防ぎ、欧州市場への展開をスムーズに進めるためには、ISO 17100やISO 27001といった国際規格に基づく体系的なプロセスを持つサービスを活用することが、最も確実なリスクマネジメントと言えます。
MDR対応に必要な翻訳運用や情報管理でお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。ISOに基づく高度な翻訳サービスと情報管理体制で、貴社の医療機器ドキュメントの多言語対応を強力にサポートいたします。