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TCシンポジウム2025登壇|YAMAGATAが実践するAI導入・活用のリアルと、これからのTCの未来像

TCシンポジウム2025登壇|YAMAGATAが実践するAI導入・活用のリアルと、これからのTCの未来像

セミナー・レポート

2025.10.17

2025.10.17

このコラムを書いた人

〇〇企画部 A.H

2025年10月10日、京都リサーチパークで開催された「TCシンポジウム2025」。
テクニカルコミュニケーション(TC)業界の最新動向と未来を探るこのイベントの中でも、昨今特に注目が高まっているAIをテーマにしたセッション「25-TC12【パネルディスカッション】最新版AI事情 ~これからのTCとAIを考える~」には、64名もの方々にご参加いただきました。

本セッションでは、AI技術の専門家と共に、YAMAGATA株式会社のAIビジネス開発担当である永田功が登壇いたしました。

AIはTCの制作現場にどのような変革をもたらすのか?
私たちは「傍観者」でいるべきか、「実践者」となるべきか?

――本記事では、当日のセッションで共有された知見、特にYAMAGATAが全社を挙げて取り組んできたAI導入・活用の具体的な道のりと成果を中心に、その詳細をレポートします。


この記事は、以下のような課題をお持ちの方に特におすすめです。

  • 制作効率化に悩む方

  • AIを社内に導入したいが、何から手をつければ良いか分からない方

  • AIを使いこなしたいと考える人

  • AI時代におけるTCの未来や、自身のキャリアについて考えている方


セッション概要:AIの最新動向から具体的な活用事例、そして未来まで

本セッションは、AIの現状と未来、企業での具体的なAI活用事例、そして産学連携による研究という3つの視点から、TCとAIのこれからを深掘りする構成で進行しました。

  • コーディネーター
    中原 司郎((一財)テクニカルコミュニケーター協会)

  • 企画担当
    川越 智子(YAMAGATA株式会社)

  • パネリスト
    AIの現状と未来:門岡 良昌氏(WildBird代表)
    YAMAGATAでの活用・導入事例:永田 功(YAMAGATA株式会社)
    AIを使ったマニュアル作成支援とその先:山下 倫央 准教授(北海道大学)

セッションは、各登壇者によるプレゼンテーションと、その後のパネルディスカッションの二部構成で、TCとAIの関係性を多角的に掘り下げました。

急速な進化を遂げるAIと「AI時代を生きる心得」

セッションの口火を切ったのは、門岡良昌氏です。
AIに京都弁で自己紹介をさせるデモンストレーションから始まり、最新の画像・動画生成AIの驚くべき能力を紹介されました。
AIが単なるチャットツールから、目・耳・口、さらには身体を手に入れ、社会現象のシミュレーションまで可能になっている現状を解説しました。

その上で、AGI(汎用人工知能)やASI(超人工知能)の到来も見据え、私たちがこれからの時代をどう生きるべきか、その「心得」を力強く語られました。

「まず『AIと友達』になり、AIによって生まれた時間で『己を磨く』。そこで磨かれた感性や人間力で新たな課題やアイデアを見つけ、再び友達であるAIと解決・創造していく。このスパイラルを回し続けることで、いずれは『AIの上に立つ』ことが重要になる。」

門岡氏のメッセージは、AIを単なるツールとしてではなく、共に成長するパートナーとして捉えることの重要性を、参加者に強く印象付けました。

YAMAGATAが挑むAI導入・活用の最前線 ― 「傍観者」から「実践者」へ

続いて登壇したYAMAGATAの永田は、企業がAIを導入し、組織文化として根付かせていくまでのリアルな道のりを、具体的な事例と共に紹介しました。

なぜAI導入に取り組んだのか ― TC業界が直面する3つの「壁」

永田はまず、2022年末の生成AIの登場を「TC業界が長年抱えていた課題を乗り越える大きな機会」と捉え、YAMAGATAが「傍観者」ではなく「実践者」となることを選択したと語りました。
その背景には、多くの企業が共感するであろう、無視できない3つの「壁」の存在がありました。

  1. ノウハウの属人化:ベテランの経験や感覚に依存し、技術継承や品質の標準化が難しい。

  2. 生産性向上の限界:人手不足が深刻化する中、既存の改善では効率化に限界がある。

  3. 品質担保への懸念:業務負荷の増大により、品質維持が難しくなるリスクがある。

YAMAGATAは、これらの課題を解決する鍵としてAIの実践的活用を決断しました。

AI導入のリアルな道のり「導入ジャーニー」

AI導入は、単にツールを導入して終わりではありません。
永田はYAMAGATAの取り組みを「黎明期」と「文化醸成期」の2つのフェーズに分け、その具体的な歩みを紹介しました。

Step1:黎明期(土台作り)

まず取り組んだのは、全社でAIを安心して活用するための土台づくりです。
初期段階では、AIに対して慎重な見方を持つ経営層に向けて実演を行い、その実用性と可能性を共有しました。
全社プロジェクトとして合意を得た後、セキュリティを最優先に環境整備を進め、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)に準拠したリスクアセスメントを実施。
入力データがAIの学習に使われない「オプトアウト」設定が可能なツールを選定し、利用ルールを策定しました。

さらに、経営層の理解と安全な環境を背景に、全社員を対象としたウェビナーを開催。
「AIは難しい」「よく分からない」といった漠然とした不安を解消し、全社的なリテラシー向上を図りました。

Step2:文化醸成期(「使う」を当たり前に)

次に目指したのは、一部の詳しい人だけでなく、全社員がAIを日常的に使う文化の醸成です。
外部アドバイザーを招いた実践的ワークショップの実施や、メルマガ・社内ポータルでの活用情報共有を通じて、スキルの定着を推進しました。

特に転機となったのが、全社を対象とした「生成AI活用コンテスト」です。
業務効率化や新しい価値創造をテーマにアイデアを募集し、最優秀賞には30万円を授与。
制作部門だけでなく、製造や品質管理など幅広い部署からも応募がありました。

結果として、参加者の81.9%が「次回も参加したい」と回答
さらに、1日あたりのAI利用者数が33%増加するなど、全社的な活用促進につながりました。

「非エンジニア主導」の業務改革 ― AI活用事例3選

文化醸成が進む中、現場ではエンジニア以外の社員による業務改善が次々と生まれました。
セッションでは、代表的な3つの事例が紹介されました。

  1. ツール内製化で現場課題を即時解決
    プログラミング経験のない社員が、生成AIと対話しながら自動処理ツールを作成。
    数週間かかっていた翻訳データ抽出作業を、1時間で完了できるようになりました。

  2. 専門業務の自動化で品質を標準化
    スタイルガイドをAIに学習させ、ライティング校正やスライド作成を自動化。
    品質のばらつきを防ぎ、作業効率を高めました。

  3. コンテンツ制作の高速化でリードタイムを短縮
    テキスト・画像・動画などをAIで生成し、展示会用映像を数時間で制作。
    従来数日を要していたプロセスを大幅に短縮しました。

イラスト生成、動画作成の事例

これらの事例は、AIが一部の専門家だけのものではなく、現場の誰もが使える実践的ツールになり得ることを示しています。

産学連携で拓く「分かりやすいマニュアル」の未来

永田の発表の後には、北海道大学大学院の山下倫央准教授が登壇。
YAMAGATAと共同で進めている「AIによるマニュアル制作支援」の研究について紹介しました。

山下准教授は、高品質なマニュアル制作が専門知識を要し、属人化しやすい課題があると指摘。
YAMAGATAの専門家へのヒアリングを通じて、マニュアル作成プロセスを7つの工程に分解しました。

  1. 目的設定

  2. 素材情報の収集

  3. 情報の整理

  4. 順序付け

  5. 目次構成の作成

  6. ライティング

  7. 文章校正

このうち、「情報整理」から「文章校正」までの工程では、大規模言語モデル(LLM)の活用によって一定の自動化が可能であると述べ、現在は各工程の精度向上に取り組んでいると説明しました。
最終的な目標は、AI技術を用いてマニュアル制作の属人化を解消し、誰にとっても分かりやすいユーザーフレンドリーなマニュアルを実現することです。

また、マニュアルの進化とともに、TCに携わる人の役割も変化していくとし、「知識の複製者」から「知識の設計者」、そして「知識の指揮者(オーケストレーター)」へと進化する未来像を提示しました。

パネルディスカッションと質疑応答

登壇者による講演の後は、「これからのAIはどこまで進化するか」「TCの未来をどう描くか」をテーマにパネルディスカッションが行われました。
AIの進化によって一部の仕事は自動化されるものの、企画や戦略設計など上流工程においては人の価値がさらに高まるという点で意見が一致しました。

質疑応答では、AIチェックツールの精度に関する質問など寄せられました。
登壇者からは「AIにすべてを任せるのではなく、目的に応じた専用チェックツールをAIで作り、それを活用することが重要」との回答があり、参加者は熱心に耳を傾けていました。

まとめ:AIは脅威ではない。TCの価値を飛躍させるパートナーへ

今回のセッションを通じて明らかになったのは、AIはもはや遠い未来の技術ではなく、TC業界の課題解決と価値創造を支える実践的なパートナーであるということです。

YAMAGATAは「実践者」としてAIと向き合い、属人化の解消、生産性向上、社員一人ひとりの創造性発揮といった成果を実現してきました。
さらに北海道大学との共同研究を通じ、誰にとっても分かりやすいマニュアルの実現に向けて歩みを進めています。

AIの力を正しく理解し、積極的に活用すること――それこそが、これからのテクニカルコミュニケーター、そしてすべてのビジネスパーソンに求められる姿勢だといえます。


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