イベント

TOPイベント北海道大学で専門知識をクリアに伝えるテクニカルライティング講座開催

北海道大学で専門知識をクリアに伝えるテクニカルライティング講座開催

今回は北海道大学で開催された「テクニカルライティング講座」の模様をレポートしたいと思います。講師に同行し、実際の講義の様子を肌で感じながら、この分野の魅力を存分に味わうことができました。

テクニカルライティング/テクニカルライターとは?

まずはテクニカルライティングとテクニカルライターの役割について詳しく説明しましょう。テクニカルライターは、取扱説明書、ウェブサイトの文言、告知チラシなど、特定の目的を持って情報を伝える実用文を作成するプロフェッショナルです。
その仕事は、相手に正確に理解してもらえるような文書を書くことであり、これは決して簡単なことではありません。
テクニカルライターは、単に情報を文書化するだけでなく、読者にとってわかりやすい形で情報を構築し提示する役割を担っています。
具体的には、専門用語を一般の言葉に翻訳したり、複雑なプロセスをステップバイステップの指示に分解したりする力が求められます。さらに、文書の目的とターゲット読者を常に意識しながら内容を調整し、技術的な背景知識がない人でも専門的な内容を理解できるようにする必要があります。
このようなテクニカルライターの重要な役割は、企業内で果たす基本的な責任に過ぎません。テクニカルライターは情報の架け橋として、複雑なアイデアを明瞭に伝えることで、製品やサービスの成功に直接貢献しているのです。効果的なテクニカルライティングがあれば、ユーザーは製品を安全かつ効率的に活用でき、結果として顧客満足度と企業の信頼性が向上するのです。
このように、テクニカルライティングは単なる文書作成の技術ではなく、ビジネスの効率性、信頼性、透明性を高める重要な役割を担っています。企業におけるコミュニケーション力の向上に大きく寄与する、必須の技術分野だと言えるでしょう。

テクニカルライティングの歴史

テクニカルライティングは、1950年代に工業製品の開発プロセスにおける記録作業として誕生しました。当時は製造現場での安全確保や作業効率化を目的に、専門的な製品情報を文書化する必要があったためです。
1960年代以降、一般消費者向けの製品が増えるにつれ、製品の適切な使用方法を説明する取扱説明書の需要が高まりました。テクニカルライターは、専門用語の一般化や手順の分かりやすい解説など、製品の安全な利用を促進する役割を果たすようになりました。
1980年代に入るとパソコンの普及が進み、ソフトウェアの使用説明書作成がテクニカルライターの新たな重要な業務となりました。複雑なコンピューター操作を、一般ユーザーに分かりやすく伝える必要があったためです。
この間、産業分野でも装置の高度化が進み、テクニカルライターの存在価値は一層高まっていきました。専門知識を持つエンジニアからでも理解が難しい技術情報を、一般の作業員にもわかりやすく解説することが求められたのです。
1990年代以降は、インターネットの発達に伴いWebサイトでの情報発信が重要になりました。企業が製品情報や技術解説を掲載する際に、テクニカルライターの役割が不可欠となりました。
21世紀に入ると、ビジネス文書、教育資料、マーケティング資料など、文書の種類を問わず、テクニカルライティングの手法が幅広い分野で活用されるようになりました。明確で的確な情報発信を重視する現代社会において、テクニカルライティングの重要性は日増しに高まっているのです。

企業におけるテクニカルライティングの取り組み

このようなテクニカルライティングの重要性から、Google 、LINE、サイボウズなどの先進的な有力IT企業は、社員教育にテクニカルライティングを積極的に取り入れています。これらの研修は、単に個々の従業員のスキルアップにとどまらず、組織全体でのコミュニケーション力の向上を目指しています。効果的な情報伝達によってチーム間の連携が円滑になれば、結果として業務の生産性向上にもつながると期待されているのです。

Google Technical Writing Courses
https://developers.google.com/tech-writing

LINE LINE Engineering
https://engineering.linecorp.com/ja/blog/line-technical-writing-course

サイボウズ 「テクニカルライティングの基本」のスライド
https://speakerdeck.com/naohiro_nakata/technicalwriting

一方、日本国内ではテクニカルコミュニケーター協会が中心となり、テクニカルライティングに関するリスキリングの機会を提供しています。同協会が主催する検定試験は、テクニカルライターの専門性を広く認知させ、業界全体の技術水準を高める役割を果たしています。
企業に所属する従業員がこの検定合格を目指して研鑽を積めば、それは自身のキャリアのリスキリングにもなります。加えて、企業側もトレーニングを受けた人材によって、より質の高いコミュニケーションを内外に発信できるメリットがあります。

一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会
https://jtca.org/

公的機関でもテクニカルライティングの考え方が取り入れられつつあります。文化庁が公開した「新しい『公用文作成の要領』に向けて」の報告では、わかりやすい文書作成の重要性が強調され、テクニカルライティングの手法が反映されています。

文化庁 文化審議会国語分科会
新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/92895101_01.pdf

さらに、海外の教育機関でも、テクニカルライティングに特化した学士号や修士号プログラムが増えつつあります。
これらの高等教育コースでは、優れたライティングスキルに加え、情報設計の理論、プロジェクト管理の実践など、幅広い知識とスキルを学生に身につけさせます。卒業生はテクニカルライターとしてだけでなく、コミュニケーション全般のスペシャリストとしてキャリアを歩むことができます。
このように、企業や教育機関の取り組み、さらにはリスキリングの手段としても、テクニカルライティングへの注目が高まっています。
テクニカルライティングは単なる一過性のスキルではなく、高い専門性を持つグローバル標準の職能として確立されつつあります。効果的なコミュニケーション能力の育成は、企業の業務品質や生産性の向上のみならず、ビジネス全体の発展にも大きく貢献するはずです。

北海道大学でテクニカルライティング講座を開催

 

左:工学部 中央:情報科学院 右:総合博物館

 

YAMAGATA株式会社は、2023年8月より北海道大学工学部調和系研究室と、AIを活用した次世代マニュアルの共同研究を行っております。

北海道大学と「次世代マニュアル」の共同研究の契約を締結し、研究を開始
https://yamagata-corp.jp/news/879/

この研究は、YAMAGATAのライティングの知見と北海道大学のAIの知見を合わせ、生成AIによるテクニカルライティングの研究も行っております。
その一環として、「わかりやすい文章」の深い理解を得るとともに、学生自身の研究や論文執筆においてテクニカルライティングを効果的に活用する方法を学ぶことを目的として開催いたしました。
講師を務めたのは、同社の経験豊富なベテランテクニカルライターです。講義は2時間に及び、テクニカルライティングの基礎から応用までを体系的に解説しました。

今回の講座内容は弊社が設計仕様書などのドキュメント制作に携わるエンジニアなど行っている講座内容と同じものを学生の方向けに実施しました。
まず冒頭で、テクニカルライティングの重要性、専門用語の一般化方法、文書の構造組み立てのポイントなどの基本が説明されました。
中盤では、ロジカルな思考力、読み手視点の重視、分かりやすい構成を作るコツなど、テクニカルライティングの基礎力が詳しく講義されました。

受講者の反応と講習の成果

講習会終了後に実施された受講者アンケートでは、「研究文書作成スキルの向上に役立ちそう」とのポジティブな回答が多数寄せられました。質疑応答の時間には、ロジカルシンキングを基にしたツリーの作り方、最近の日本語表現の変化、さらには日本語と英語のテクニカルライティングの違いに関する質問などが寄せられました。
これらの質問からは、受講者の高い関心とテクニカルライティングへの意識の高さが伺えます。

受講後のアンケート結果


 

最後に

このように、テクニカルライティングは単なる文書作成スキルを超えた、高度な専門性を持つ職能として確立されつつあります。本講習会はその重要性を改めて示す良い機会となりました。

『わかりやすい文章の作り方』オンライン講座のご案内

このようなテクニカルライティングのノウハウを広く伝授すべく、弊社ではオンライン講座「わかりやすい文章の作り方」を開催しております。
経験豊富なテクニカルライターが講師を務め、構成の組み立て方やロジカルシンキングなど、体系的な指導を行います。


対象:企画書・提案書、設計仕様書などの文書作成に携わるエンジニアなど
講師:弊社テクニカルライター

開催方法:オンライン
時間:1.5時間
価格:30万円/回~


※事前に企業様でよく使われる文書をご提供いただき、実例を交えた具体的な指導を行います。

クリアな文章作成力は、技術文書はもちろん、日常業務のメールやプレゼン資料作りにも大きく寄与します。この講座を受講して、業務の効率化と生産性向上の新たな一歩を踏み出してみませんか。

関連リンク

テクニカルライティング講座: 技術文書のクオリティを向上させるための鍵
2025年の崖を乗り越える:システム運用マニュアルの効果的な作成法
システム運用マニュアルと操作マニュアルの違い

システム運用/BtoB向けマニュアルの制作

放送局用映像関連装置
医療機器
産業機械(BtoB製品)

 

 

お問い合わせ

サービスに関するご質問やご相談など、まずはお気軽にお問い合わせください。
045-461-4000 (受付時間 9:00~18:00)
045-461-4000 (受付時間 9:00~18:00) お問い合わせフォーム