
展示会で来場者の足を止め、自社ブースに興味を持ってもらうための工夫として、「診断ツール」は非常に有効な手段です。来場者がその場で回答し、結果を見ながら自分の課題に気づけるため、ブース前での会話のきっかけづくりにもつながります。
本記事では、「バックオフィスDXPO」向けに制作した診断ツールの裏側をご紹介します。ブース前での会話のフックとなり、リード獲得から後日のWeb面談へとつなげる重要なミッションを帯びたこのツールが、どのような試行錯誤を経て形になったのか。失敗と成功のリアルなプロセスをレポートします。
今回の展示会準備において、私たちにはツール制作に関する専門知識がありませんでした。通常であれば「専門知識がないから無理だ」と外部に委託するか、企画自体を諦める場面です。しかし、果たして本当にそれで終わらせてよいのでしょうか。「専門知識がない」という理由だけで諦めるのは、現代において少し思考停止に陥っているのではないか。そんな問いかけから、プログラミング言語を書かずに自然言語によるAIへの指示だけでシステムを構築する「バイブコーディング」という手法を用い、自らの手でツールを制作する挑戦が始まりました。
診断ツールを作るにあたり、結果を何かに例えて伝える「メタファー」の手法を用いることにしました。しかし、ここから思いがけない壁にぶつかることになります。

今回の展示会では、ブース内のモニターで「Yネギ君」というオリジナルキャラクターを起用することが既に決まっていました。そこで私たちは、ブース全体の世界観を統一したいという発想から、診断結果のメタファーも「野菜」で統一しようと判断しました。
具体的には、YES/NOで答える8問の診断ロジックを設計し、ユーザーを8つのタイプに分類する仕組みです。この8タイプに対して、「トマト型」「モヤシ型」「タマネギ型」「ゴーヤ型」「サツマイモ型」「カボチャ型」「ピーマン型」「キャベツ型」といった野菜のキャラクター設定をAIに割り当ててもらいました。
しかし、実際に出来上がったものを見て、私たちは大きな違和感を覚えました。診断結果のビジネス課題と野菜との結びつきが薄く、ユーザーが結果を見たときに自分の課題を直感的にイメージしにくかったのです。ブースの世界観を揃えることを優先した結果、肝心な「ユーザーが自分ごと化できるか」という視点が欠け落ちていました。ここで私たちは、方針を大きく転換することになります。
野菜メタファーでの失敗を受け、ターゲットであるバックオフィス部門の方々が日常的に結びつきを感じやすい「デスク」を、新たなメタファーに設定しました。

前回の失敗から学んだ最大のポイントは、AIへの指示の出し方です。AIに一からタイプ名を考えさせるのではなく、まずは自分たちの手で「汚デスクあるある」を大量にリストアップしました。例えば、「デスクの上がごちゃごちゃ」「椅子の高さが合わない」「デスクトップがアイコンだらけ」「キーボードのボタンが取れている」「趣味のものを置きまくっている」といった、具体的で生々しいネタです。
その上で、この「あるあるネタ」を、私たちが抱える8つのバックオフィス課題(属人化、教育コスト、検索性、問い合わせ、更新停滞、品質のばらつき、AI定着、整理不足)に当てはめるようAIに指示しました。
AIが最初に出してきた一次アウトプットは、ロジックとしては確かに合っていました。しかし、「椅子の高さが毎回合わないタイプ」など、表現としての面白みや生々しさが少し弱かったのです。そこで、人がもう一段階イメージを具体的に伝え直し、「椅子の高さが合っていない」というような、よりリアルで刺さる表現へと微調整を重ねました。こうして、ようやく来場者が思わずうなずいてしまうような診断ツールが完成したのです。
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野菜メタファーとデスクメタファー。この2つの経験は、AIを活用する上での本質的な気づきを与えてくれました。
野菜のケースでは、テーマだけを渡し、具体的な当てはめや表現の構築をAIに一任した結果、失敗に終わりました。一方、デスクのケースでは、素材となる「あるあるネタ」まで人が生々しく用意し、AIには情報の整理や精緻化といった作業を委ねました。その結果、目的に深く刺さるツールを構築することができたのです。
ここから見えてきたのは、「発想の根幹は人、そこから先はAI」という明確な役割分担です。AIは万能な魔法の杖ではなく、人が与えた素材や意図を増幅させるパートナーです。どんなに優れたAIを用いても、ユーザーの心を動かす「生々しい課題感」や「共感を呼ぶ切り口」を生み出すのは、現場の空気を知る人間の仕事にほかなりません。AIに委ねる範囲の深さと、事前の準備やインプットの質が、最終的な成果物の質にそのまま比例することを強く実感しました。
「専門知識がない」という壁を、AIによるバイブコーディングというアプローチで乗り越えた今回の展示会準備。試行錯誤の中で得た「発想の根幹は人」という教訓は、診断ツールの作成に限らず、ビジネスにおけるあらゆるAI活用に応用できる普遍的な考え方だと感じています。
なお、同じ展示会準備の中では、動画制作や資料デザインのプロセスでもAIを活用しており、そちらは別記事で紹介しています。本レポートが、皆様の事業においてAIを使いこなし、これまでにないスピードと柔軟性で課題を解決していくためのヒントになれば幸いです。
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