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ChatGPT 新機能「GPTs」:AIでテクニカルライティングに挑戦

AIが日常に溶け込んだ一年

2023年は、AI技術が私たちの生活に深く浸透した年でした。特に「生成AI」と「ChatGPT」の新語・流行語大賞ノミネートは、その影響の大きさを物語っています。AIは、ビジネスシーンでのドキュメント作成、会議記録、データ分析に加え、個人レベルではショッピングアシスタントや健康管理ツールとしても活用されています。このような多様な用途でのAIの利用は、私たちの生活をより効率的で快適なものに変えています。

ここで特に注目すべきは、ChatGPTのような会話型AIの進化です。ChatGPTは、ユーザーが入力した質問やリクエストに対して、人間のように自然な対話形式で応答する能力を持っています。これにより、従来のコンピュータとのインタラクションがより直感的で理解しやすいものになりました。

実際の利用状況は?

野村総合研究所の調査(日本のChatGPT利用動向(2023年4月時点))によると、ChatGPTを実際に活用している人は全体の約20%に留まっています。これは、AIのポテンシャルは広く認識されているものの、実際の活用に至るユーザーはまだ限られていることを示しています。AIのさらなる普及と効果的な利用には、ユーザーフレンドリーなインターフェースの提供や、AIの機能とメリットをより広く伝える取り組みが必要です。

野村総合研究所(NRI)

YAMAGATAの取り組み

YAMAGATAは、ITとAI技術の進化に取り組み、業務の効率化と品質向上を目指しています。今年4月、社内の知識と技術を強化するために、ChatGPTに関する研修を実施しました。この研修では、ChatGPTを活用して業務プロセスを改善する方法について、具体的な事例を学びました。

さらに、今年は大きな取り組みとして、北海道大学 調和系工学研究室と共同で次世代マニュアルの研究プロジェクトをスタートさせました。このプロジェクトでは、生成AIを活用したマニュアルの作成だけではなく、マニュアルの新しい形態や効果的な作り方についても深く掘り下げています。この共同研究から得られる知見を活用し、マニュアル制作の新しいスタンダードを築き上げることを目指しています。

北海道大学と「次世代マニュアル」の共同研究の契約を締結し、研究を開始
「次世代マニュアル」プロジェクト 社員向け講演会レポート

GPTs」:カスタムAIモデルでライティングアプリを作成

「GPTs」とは

「GPTs」は、ChatGPTの最新アップデートにより追加された機能で、ユーザーの特定のニーズや用途に合わせてAIモデルをカスタマイズすることができます。このツールを使うと、ChatGPTを特定の業界や業務に特化させ、専門用語を理解し、それに基づく応答をするAIモデルを作成できます。
GPTsの大きな利点は、コーディング知識がなくてもAIモデルをカスタマイズできるノーコード機能と、PDFやWord文書など様々なファイル形式を読み込んで学習させる能力です。これにより、企業は既存の資料やデータベースを活用して、より高精度のカスタマイズされたチャットGPTを作成できます。
今回次世代マニュアルの研究の一環として、このGPTsを活用して、マニュアル作成専用のアプリケーションを作ってみましたので、ご紹介いたします。
*現在、GPTsの利用はOpenAI社の有料プランを利用しているユーザーに限られています。

AIでテクニカルライティングに挑戦

マニュアル作成時、我々テクニカルライターが重視するのは「分かりやすい日本語」の執筆です。今回、一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会(TC協会)が発行する『日本語スタイルガイド(第3版)』に記載された「分かりやすい日本語」のポイントをChatGPTに学習させました。弊社のテクニカルライターはTC協会のTC技術検定3級を取得しており、今回のAIを活用した試みは、AIが日本語スタイルガイドに沿った文章をどこまで書けるかのテストも含まれています。日本語ライティングの重要なルール数十項目と、弊社が収集した数千行のBefore(悪文)とAfter(修正文)のデータから、40件の具体的な修正サンプルをAIに登録してみました。

学習したルールの一例
・一文一義
・1文の長さ
・句読点の打ち方
・可能表現の注意点

テクニカルライティングBot(β)

GPTsを用いて作成した「テクニカルライティングBot」のトップ画面には、対話のきっかけとなる「Conversation starters」と呼ばれるボタンが設定されています。今回は「マニュアル向けの日本語にリライト」と「テクニカルライティングのポイントは何?」の2つのオプションを用意しました。「テクニカルライティングのポイントは何?」を選択すると、テクニカルライティングの重要なポイントが表示されます。

「マニュアル向けの日本語にリライト」を選択すると、ユーザーが入力した文章をマニュアル向けにリライトするためのGPTからのメッセージが表示されます。
ユーザーがリライトしたい文章を入力すると、AIは日本語スタイルガイドに従ってリライトを行います。ユーザーがリライトの理由について尋ねた場合、AIはリライトの根拠となったルールを説明してくれます。

生成AIを使用しているため、表示されるメッセージや回答は毎回異なります。ユーザーは表示された文章が元の意味を変えず、ニーズを適切に満たしているかを確認する必要があります。

ChatGPT-4の場合

カスタムしたGPTsと通常のChatGPT 4を使用したリライトの結果を比較すると、いくつかの違いが見られました。一般的に、ChatGPT-4も分かりやすくリライトしてくれましたが、時には必要以上の情報が加えられたり、原文の意味が変わることがありました。様々な文章を試した結果、GPTsで作成したマニュアルライティングBotの方が、出力された文章の精度が若干高いと感じました。

TC技術検定3級テクニカルライティング試験の例題に挑戦

次に、日本語スタイルガイド(第3版)』の付録で掲載されていたTC技術検定3級テクニカルライティング試験の例題に挑戦してみました。

検証①
『日本語スタイルガイド(第3版)』付録のTC技術検定3級テクニカルライティング試験の例題をChatGPTに一度に入力
例題に対してすべての解答を出力するよう指示

結果
40問中12問の正解(正解率 30%)
多岐選択式の設問では上手く解答を出力できませんでした。

正解率が低かった為、GPTへ例題の入力方法と指示方法を変更し、再度チャレンジ。

検証②
『日本語スタイルガイド(第3版)』付録のTC技術検定3級テクニカルライティング試験の例題をChatGPTに一度に入力

ステップバイステップで例題を解き、解答を出力するよう指示
多岐選択式の問題は、解答を出力したい問題を明確に示し、解答するように指示

結果

40問中32問の正解(正解率 80%)

ChatGPTからは、解答の理由も表示されました。

TC技術検定3級は選択問題と記述問題で構成されているため、AIがTC技術検定3級に合格できるのかは分かりませんが、想像した以上の正解率で大きな驚きがありました。

 

北海道大学との次世代マニュアルの共同研究プロジェクト

今回のGPTs検証は、弊社が次世代マニュアルの共同研究に取り組む一環として行われました。このプロセスでは、AIによるマニュアル制作の様々なタスクを探求し、業務効率の向上と新しいマニュアル制作方法の可能性を模索しています。

YAMAGATAは、この分野でのトップカンパニーを目指しており、生成AIの活用により、テクニカルライティングやマニュアル制作の効率化を図っています。
現在、北海道大学との共同研究プロジェクトに参画しているメンバーにより、社内のマニュアル制作に関する資産をAIに活用できるようデータ整理も行っております。 今後もAIを活用したマニュアル制作に関する情報を発信していく予定です。ご期待ください。

なお、今回のテクニカルライティングBotや、北海道大学との共同研究プロジェクトにご興味がある方は、ぜひお問い合わせください。

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